2017年 01月 21日

キングコング西野氏の「無料公開」はクリエイター業を安く見られるきっかけにしてしまうのか?

ここ数日、クリエイター業界で賑わっている事件の一つ

2,000円する絵本「えんとつ町のプペル」を

西野さんが無料公開した。というお話し。

 

▼現在、無料公開されているページはこちらです。

http://spotlight-media.jp/article/370505056378315909

 

SNSでは、結構これで荒れているのを見かけるのですが、

ご本人のブログ(http://lineblog.me/nishino/)にもある通り、

 

 

有名作品を無料公開すると、無名な作品のクリエイターや、方々にシワ寄せがくる!

 

といったような意見で荒れています。

 

僕は色んな業種を経験した中で感じるのは

仕事の内容によって

稼ぎ方は様々ということ。

 

稼ぎ方というのは、

  • 損しても我慢すべきポイント
  • 利益を出すポイント

など。

それは仕事の内容で色々違ってきます。

 

例えば、大量に納品するような商売。

以前、ブログでも取り上げましたが

販売系、商社系、の商売は、売る事自体は配置人数をそんなに左右しないから

売る数を増やす事が儲かる方法です。

 

(単利益×件数)-人件費=利益

 

単利益を5割にして、件数が10倍になれば儲かります。

安くしてよ → たくさん買ってくれるならいいよ

が成立します。

 

それが通じない制作する商売では、

単価を上げなければ利益は出ない。

売った数だけ時間が掛かるからです。

 

(売上×件数)-(件数×人件費)=利益

 

件数が増えれば人件費が増える、正比例なのです。

だから、売上(ほぼ利益)を高くする必要がある。

 

でも、安い方がいい。

同じ農場で取れたキャベツなら、

安いスーパーで買いたい。これ常識。

 

そういう消費行動する経験は皆んな多いのに対し

制作への消費行動は経験少ないので

(顧客)    沢山依頼するから安くしてよー

(クリエイター) え、、、単価を高くしたい

というコミュニケーションのズレで、

お互い不信感につながったりします。

 

だから、クリエイター達は、

キングコング西野氏の「無料公開」は怖いんです。

 

無用な価格交渉で疲弊したくないクリエイター達は、

「キングコング西野氏は無料なのに、そんな高いの?」っていう

顧客に交渉をされる事に怯えるわけです。

 

隣町のスーパーがキャベツを無料で配り始めた。

やばいよ、やばいよ、と怯えるわけです。

 

でも、違う。

前述の通り、

クリエイターは違うじゃないか。。。。という話しなんです。

違うと感じるポイントを5つ挙げます。

 

1)今回安くしているのは物売り商売の部分

今回は外注して作っている絵本だそうで色々ややこしいですが、

クリエイターの仕事って通常、何かを作る契約をいくらでというものです。

例えば500万円で契約したら、それ以上でも以下でもない。

 

もし売れた件数に応じて印税入るとしても、クリエイター単価というよりも

前述の「大量に納品するような商売」に属する部分です。

 

「物を多く納品する」商売は安くするのは至って普通ですよね。

多く納品する為の広告としての「無料」

クリエイターの価格と別次元で起きている商売のやり方です。

 

 

2)他が安くしても、制作内容が異なるから影響しない。

ゴッホより~、普通にーラッセンが好き!じゃないですが、

絵の質がいくら良くたって好き嫌いはある。

ゴッホが生きていて安くしてもラッセンの絵は安くなりませんよね。

 

ドラゴンボールの似た絵を描く事で仕事になった人もいますが、

そういうケースでは鳥山明氏が安くすれば影響があるかも。

でも、その人個人という限定した範囲です。

クリエイター業界でという影響じゃない。

 

クリエイターに来る仕事の根本は、

顧客のブランドを作る事だから、

プペルの絵を描く事でもないし、

マーケット(売り先)は全く被らないですよね。

 

3)クリエイターの商品は「体験」でしょ!?

今回の件は、有料で売っているのに無料公開しちゃったという話し。

これを真似するやつが出てきて無料公開が当たり前にったらどうするんだ?

その無料公開を見た人たちが、こういうのは無料と勘違いしたらどうするんだ?

という恐れを感じるクリエイターもいるそうですが。

 

でも、今回のリンク先見てください!

http://spotlight-media.jp/article/370505056378315909

 

読みやすく、いたってシンプルにデザインされていて、

内容は当然良く読み応えある。

ひらがなが読めるようになってきた

うちの長男も「ゴミ人間ってどれ?」と、

瞬時にプペルの世界に入ってしまった。

これが無料というのは凄い話しです。

 

でも、でもでもでも

「絵本」と「デジタル」は違うのは一目瞭然ですよね??

得られる「体験」に差は出ますよね?

 

同じ映画でも「映画館」「テレビ」「スマホ」で「体験」に差があります。

同じライブでも、「ドーム球場」「ライブハウス」「DVD」で「体験」に差があります。

得たい「体験」は人によってそれぞれ。

 

音楽なんて、いつだってitunesで一度購入すれば無料で何度も聞ける

それでも、そのアーティストのライブに高いお金支払っていくんですから!

そして無料でたくさん聞いた人ほど行く可能性高い!

 

「無料公開」という手段は、

クリエイターの単価とは別のところで起きている。

 

4)単価を下げたクリエイターの多くは勝手に自滅する。

まず、沢山いるクリエイターのうち、

いくら有名人だからって一人ぐらい無料にしたって影響力はありません。

想像絶する億万長者が一人いても平均年収(相場)はビクともしないのと同じです。

 

もし、相場への影響力があった場合、

キングコング西野氏に追従して単価下げたクリエイターが増える事になります。

 

するとどうでしょう。

一時的に発注は増えると思います。

でも、こなせる仕事には限りがあります。

 

 

安いという事は、こなす事に追われて勉強する時間を作れなくなります。

それでも質の高い依頼があれば稼ぎながら勉強できますが、

顧客は意外と冷静で安いところには程度の低い依頼だけしかしません。

「これは難しいから、あの安いところは不安だなぁ~」と勝手にジャッジされます。

 

安かった相手が少しでも価格を上げようとすると

顧客は「生意気」と感じて離れていきます。

下げるのは簡単でも価格を上げるのは難しいんです。

 

残念ながら、価格競争で努力したクリエイター達には大きい影響力はもてません。

 

5)こなせる仕事量には限りがある。

キングコング西野氏が単価を安くしても、

10時間しか働かないといえば、

キングコング西野氏に依頼は殺到しても、こなせる仕事量は変わらない。

西野氏に依頼できる倍率がただただ高くなるだけ。

 

いくら西野氏が安くすると言ったって、

他よりも高い金額を提示するオークションが始まります。

 

意地張って、高い金額提示を断ったとしても

結局一人の人がこなせる仕事量には限りあるから

相場への影響力は少ないですよね。

 

 

という5つの見解から、

クリエイター業を安く見られるきっかけにはならないと思うのが僕の考えです。

 

 

じゃあ、無料でコンテンツを配った今回のやり方ってどうなの?

という話しですが、

売名行為やなんやかんや言われてますが、、、

 

◆すごく気合入っているなぁ、と

そもそも、必ず成功するやり方というわけではない。

成功確率は高いかもしれないけどリスクはゼロじゃない。

失敗するリスクも抱えた商売のやり方です。

 

有名人で、しかも既に十分売れた商品。

ここで無料で話題作っても、反応がイマイチすぎたら、

損しなくても西野氏も恥ずかしくて仕方ないでしょう。

作品に自信を持っているのはもちろん、

守りに入らない姿勢は見てて面白い。

 

そもそも、ぎゃーぎゃー騒ぐ自称クリエイターで、

ここまで一つの作品に自分で売る努力をしている人っているのだろうか?

大切な時間を投じている人はいるのだろうか?

そんな勇気すらない他人が、ギャーギャー騒いでいるのが不思議で仕方がない。

 

◆クリエイターとしての単価は上がるでしょうね。

クリエイターの単価を上げる為には、

ラッセンが好き!と叫べるようなファンを増やす事ですよね。

 

ファンを増やすには、

まず作品を知っている人の人数を増やす必要があります。

 

100人しか知らない作品が100人全員ファンというのはありえない。

でも、1000人知っていれば100人以上ファンになる可能性はある。

 

無料にした事で、

今急速に「いい作品作れる」西野氏として

認知されていっていると思います。

 

興味ない人は、

無料でも読ませるのって難しいんですよね。

 

でも、

「あの芸人」が書いた、とか

「絵本で20万部売れた」とか、

「2000円の絵本が無料」とか、

まあ紹介しやすい要素が盛りだくさんです。

ホントすごい。

 

とにかく芸人として成功した有名人が

絵本の大ヒット作を作ったという情報が、

「無料」で広がっています。

 

もはや、こんなクリエイターさんに、

「絵本1万円で作ってくれ。無料じゃない、1万円だ。うれしいだろ?」

と依頼しますか?

もし、いたら頭おかしいですよね?

 

単価が高くなるどころか、依頼するのも一苦労でしょうし。

 

◆シリアル炎上マーケティング

芸人が絵本を出した!

クラウドファンディングで売った!

無料イベント開催した!

無料公開!

と、それだけでも話題性高いタイミングに、

必ず毎回反感買うようなコメントで話題で着いた火に油を注ぐ。

 

一つの作品でこれだけ炎上させるケースって少ないのでは?

シリアル炎上マーケティングですね。

※シリアルは連続といった意味

ホント、漫才のようにテンポが良い。

というか早すぎるような(笑)

 

炎上マーケティングっていうと安っぽいし、

簡単にうまくいきそうなイメージですが

真似できないし、難しいし、気合が入っていると思います。

 

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